木材の断熱性を失熱で比べると、鉄の450倍にもなります。そのため触ったときに冷やりとしません。
木材が好まれる理由のひとつに、冷やりとしない手触りのよさがあげられます。鉄やコンクリートに触れたときには「冷っと」と感じ、木材はそれと比べると違和感がありません。
「冷っと」と感じるのは、鉄やコンクリートに触れたときには、体温をすぐに奪うからです。一方、木材に違和感がないのは、触れときに熱を奪わないからです。これは、木材の熱を伝えにくい性質(=熱伝送率が小さい)によるものです。
熱は温度の高い方から低いほうへ移動します。熱の移動の速さは失熱(熱伝導率)で表されます。
次の図はいろいろな素材の失熱比較をしたものです。言い換えると手で触ったときに熱がどれだけ速く手から奪われていくか、つまり触ったときの冷たさを比較したものです。
木材の失熱は他の素材と比較してもかなり小さく、断熱材に匹敵するほどです。この性質を利用したものが、鍋などの調理器具の取っ手や柄です。鉄やステンレスなどでは、熱が伝わりやすく、すぐに熱くなってしまうため、木製の柄が使われるのです。
また、寒い地方では外に面したガラス戸やドアの取っ手などに木製のものを使っていますが、触れたときに手から体の熱が奪われないようにしているためです。
このように木材が断熱性に優れているのは、木材が無数の細胞からできており、一つ一つの細胞が空気(※)で満たされているからです。
※空気には熱を伝えにくい性質があります。
〔参考文献・出典〕
財団法人 日本木材総合情報センター「木材の基礎知識」をもとに作成