京都議定書に代わる新たな枠組み パリ協定
2014年12月2日、IPCC(※)から7年ぶりに統合報告書が公表されました。近年の温室効果ガスの排出量は史上最高となっており、近い将来、取り返しのつかない(後戻りできない)リスクが非常に高まると警鐘を鳴らすものでした。
※IPCC…世界各国から専門家(研究者)が集まり、最新の科学的見地から地球温暖化について研究する機関で、一般には「気候変動に関する政府間パネル」と呼んでいます。IPCCの報告書は、各国の国際交渉の場での温暖化対策を議論する際に、科学的な根拠として重要視されています。IPCC=Intergovernmental Panel on Climate Change
インド洋の島国モルディブは、温暖化ガスの排出量は世界全体の0.01%とごくわずかですが、地球温暖化の影響で、島々の海岸浸食が進み、そのうちいくつかの島はかなりひどい状態になっているとのこと。
参考:日本経済新聞 2013/7/2 写真:LUX*RESORTS
温暖化の影響で、北極では氷の融解が加速し、シロクマなどの野生動物にも深刻な影響を及ぼしています。WWFの調査によると、シロクマが移動する際に長距離の泳ぎを強いられて、途中で溺死する個体も確認されているとのこと。
写真:George Lincoln「Our Environment」
重大な変化が起きる転換点は2度の上昇
人類の経済活動で環境に影響を与えるほど温室効果ガスが排出されるようになったのは、産業革命以降です。国際的な目標は、産業革命前と比べて平均気温の上昇を2度未満に抑えるというもので、国際的な合意がなされています。それ以上の気温上昇になると、極めて深刻な問題が生じ、取り返しのつかない(後戻りできない)事態になると予測されているからです。
この目標を達成するためには、2050年までに70%の温室効果ガスの排出削減。さらに、今世紀中にほぼゼロにする必要があるとされています。
そのためには、経済活動に伴う二酸化炭素の排出量をのべ2.9兆トン以下に抑える必要があります。しかし、産業革命以降100年あまりの間で、すでに1.9兆トンを排出してしまっているため、現在のペースで排出すると30年後には、上限の2.9兆トンを超えてしまうと予測されています。
今も刻々と排出されている温室効果ガス。現状のままでは、平均気温の上昇を2度未満に抑えるという目標達成は、困難とされています。深刻で逆戻りできない影響を避けるためには、これまで以上の対策が求められています。
京都議定書からパリ協定へ
2015年にパリで開催されたCOP21では、2020年以降の国際的な温暖化対策についての法的枠組みとして「パリ協定」が採択され、2016年11月に発効しました。
1997年に採択された京都議定書では、先進国のみに地球温暖化ガスの削減目標が課せられ、中国やインドなどの発展途上国には、削減目標が課せられていませんでした。しかし、その後の経済発展に伴ない、開発途上国でも、温室効果ガスの排出が急速に拡大してきました。また、最大の排出国であるアメリカが、京都議定書から離脱してしまいました。
このような課題を踏まえ、全ての国が参加する、より公平で、より実効性の高い法的枠組みを構築することが求められ、パリ協定が新たに採択されました。
パリ協定における目標
パリ協定では、「産業革命以前からの世界の平均気温の上昇を2度未満に抑える」という全体目標が掲げられました。また、この気温の上昇を1.5度に制限することが、リスク削減に大きく貢献することにも言及し、世界全体で今世紀後半には、人間活動による温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく方向を打ち出しました。
このため、全ての締約国が温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出・更新し、その実施状況を報告しレビューを受けること、削減目標の目標達成のための国内措置をとることなどが国際約束として定められました。
COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)- 2015年11月30日~フランス・パリ
森林吸収源対策
パリ協定では、森林を活用した温室効果ガスの排出削減も言及しています。各締約国は、森林の持つCO2の吸収機能の強化、また、炭素貯蔵機能を保全すべきことが規定されました。さらに、開発途上国における森林の減少・劣化に由来する温室効果ガス排出の削減等の実施や支援を奨励することが盛り込まれています。
日本の目標
日本では、2015年7月に、温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比で26%削減することを目標とする約束草案を政府の地球温暖化対策推進本部において決定し、気候変動枠組条約事務局に提出しました。この削減目標量のうち、2.0%分に当たる約2780万CO2トンについては、森林吸収源対策によって確保することとしています。
この森林吸収量目標を達成するためには、引き続き、間伐や主伐後の再造林等の森林整備や木材利用等の森林吸収源対策を着実に実施していくことが必要です。