長伐期施業 林業

伐採の樹齢を通常の2倍程度(80~100年)まで引き伸ばす方法を、長伐期施業といいます。長伐期施業にはメリットとデメリットがあります。

長伐期施業

長伐期施業とは

巨木が立ち並ぶ吉野の人工林 ©私の森.jp 写真部

一般的に育成林(=人工林)では伐採される林齢は40~50年ぐらいですが、これに対し伐採林齢(樹齢)を概ね2倍程度の80~100年まで引き伸ばす方法を、長伐期施業といいます。長伐期施業では大径材(太い木)が生産されることから、高収入が得られることと、森林の持つ公益的機能が長期にわたり安定的に維持されるなどのメリットがあります。


長伐期施業の環境面におけるメリット

40年を過ぎた森林では、競争による自然枯死などで、林冠にすき間ができて林内が明るくなり、下層の植物が繁茂してきます。それにともない土壌構造も発達してきます。 長伐期施業では下層植生や土壌構造が発達した状態が長く維持できるため水土保全機能や生物の多様性をもたらすなど森林のもつ公益的機能を維持していくのに有利だと考えられています。

ただし、高齢な樹木は成長が遅くなるため、若齢な樹木と比べて、温室効果ガス(CO2)の吸収量については減少します。


長伐期施業の林業におけるメリット

長伐期施業は、これまで40年から50年で行っていた主伐の時期を、80年~100年に延ばします。収穫の時期が遅くなる分、間伐を積極的に行うことによって、材価の高い大径木が得られます。大径材は高値で取り引きされることが多く、継続的に安定した収入を得ることができます。

また、長伐期施業で得られる間伐収益が、最終的には短伐期施業の2回分以上の収益を得ることが可能であるともいわれています。

伐期を長くすることによって、一伐採サイクルの中で植栽、下刈りなどの更新、保育作業を軽減することができます。例えば、80年の長伐期施業を1回行うのと、40年の短伐期施業を2回行った場合を比較すると保育作業は、短伐期施業では2回必要です。しかし、長伐期施業ではこれらの作業が1回ですむので、単純に考えると経費が半分ですむことになります。


長伐期施業のデメリット

長伐期施業では立木の状態が長期間にわたるため、凍裂や病虫獣害の発生する確率が高くなります。せっかく大径木に育てても、割れや変色などが生じると材価が安くなります。地域によっては長伐期施業によってこのような被害の確率が高まるともいわれています。今後は長伐期施業に適した条件を研究し、明らかにしていく必要があるようです。


〔参考文献・出典〕
全国森林組合連合会・社団法人全国林業改良普及協会「緑豊かな未来のために森林整備を進めよう」/林野庁ホームページ