ウッドマイルズは使用する木材輸送時の環境負荷を表す指標。木材の輸送距離が長いほど輸送燃料を消費するため環境負荷が大きくなります
木材(木製品)は製造時のエネルギーが他の素材と比べて小さい(=環境負荷が小さい)ことが知られています。さらに、使用後も粉砕するなど細かくしてチップや繊維などにすれば、紙製品や木質ペレット、他の木質素材(パーティクルボード、ファイバーボードなど)に加工できるなどリサイクル性に優れています。つまり、木材はライフサイクル全体にわたり、環境負荷の少ない素材です。しかし、外国産木材(輸入材)を多く使用することは必ずしもエコロジーとは言えません。輸送時の燃料消費により、環境に負荷をかけてしまうからです。
この輸入材の環境負荷を数値化(見える化)したものが「ウッドマイルズ(ウッドマイレージ)」です。
日本は森林資源が大変豊富な国で、先進国の中では森林率がフィンランド、スウェーデンに次いで世界第3位の森林大国です。しかしながら、日本の木材の自給率は3割弱、7割以上は外材(=外国産の木材)を使っています。日本で使われている木材は北米やヨーロッパ、ロシア、ニュージーランド、アフリカや南米など遥か彼方から輸送船に載って運ばれてきます。
船で海を渡ってきたロシアからの丸太。北海道の小樽の港に入港
ところで木材輸送燃料のほとんどは化石燃料(重油)です。日本の木材供給量の8割を占める外材は,大量の化石燃料を燃焼させ、大気中に温室効果ガス(二酸化炭素)を放出しながら運ばれてきます。
つまり、木材の輸入量が大きいほど、また輸送距離が長いほど、燃料の消費量は大きくなるため、環境負荷も大きくなります。
そこで「木材輸送量×輸送距離」を「ウッドマイレージ」として、環境負荷を表す数値的な指標としています。この木材の輸送距離を「ウッドマイルズ」と呼んでいます。
日本のウッドマイレージはアメリカの5倍。ドイツの22倍
上のグラフをみると、木材輸入について日本は他国と比べて桁違いに大きな環境負荷(=ウッドマイレージ)をかけていることがわかります。その負荷量はアメリカの約5倍、ドイツの約22倍です。
日本は世界有数の森林大国であるにもかかわらず、環境に負荷をかけて木材を輸入していることになります。ウッドマイレージは日本のいびつな木材の消費構造が明らかにしています。
ウッドマイレージの考え方(木材輸送による環境負荷)を住宅に適用してみます。次のグラフは外国産(欧州材)で家を建てた場合と国産材や地域材で家を建てた場合の木材輸送過程のCO2の排出量を環境負荷として表したものです。
国産材で建築すれば、環境負荷が5倍以上も小さく、地域材(地産地消)住宅では、約14倍も小さいということがわかります。
木造住宅の木材輸送過程のCO2排出量のグラフ
※地域材住宅(すべて地域材住宅)は輸送距離を150kmと仮定。
欧州材住宅(すべて欧州材)と地域材住宅(すべて地域材)を使用した木造住宅では、ガソリン約2,700リットル分の消費エネルギーの差が出ることも計算されています(ガソリンの排出係数を2.3kg-CO2として計算した場合)。
〔参考文献・出典〕
財団法人日本木材総合情報センター「木材情報」2002年8月号/独立行政法人IPA情報処理推進機構教育用画像
〔関連リンク〕
ウッドマイルズ研究会