檜葉・明日檜(ヒバ・アスナロ)

ヒノキ科アスナロ属

北海道~関東北部・四国・九州に分布

ヒバの別称は「アスナロ」。その由来は「明日はヒノキになろう」といわれ、檜(ヒノキ)に劣るようなイメージをもたれています。しかし、ヒバの持つ樹脂成分や独特の芳香(ヒノキチオール)により、枯死しても芯まで腐らないほどの耐久性があり、木材としては、ヒノキにひけをとらない優良材です。

青森のヒバ林は日本三大美林のひとつとなっている

鱗片状の葉を持ち、葉裏のW字型の気孔線がヒバの特徴

球果は10~16mm程度。10月~11月に熟し、種子を落とす

ヒバ材は建築をはじめ、まな板・桶などに使われる

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ヒバ(檜葉・明日檜)とは

ヒバは、アスナロの変種とされており、「ヒノキアスナロ」が正式名称です。一般的には「ヒバ」と呼ばれることが多いようですが、特に青森産のヒノキアスナロが「ヒバ」と呼ばれ、石川県(能登地方)のものは「アテ」と呼ばれています。

材は心材を含めて薄い黄白色で、独特の芳香があります。年輪が詰まっているものが多く、強度的な性質はヒノキとほぼ同じです。また、ヒノキチオール(β-ツヤプリシン)が多く含まれており、耐久性・耐水性が非常に高いために建築材(住宅の土台など)をはじめ、まな板、桶などにも使われます。

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ヒノキチオールはヒバに含まれている

ヒノキチオールには、雑菌や虫を寄せ付けない、抗菌・防虫・防ダニ効果があることが知られています。そのため、ヒバで建てられた家には、蚊やシロアリなどの害虫が近寄ってこないといわれています。

一方、人間に対しては、ヒノキチオールのα-ピネンという成分により、ストレスを和らげ、心が落ち着き、気持ちをリラックスさせる働きがあります。さらに、アトピー治療にも利用されています。近年の研究では、農作物が長持ちしたり、草花が活性化する等の報告がされています。

このヒノキチオールは、その名から、ヒノキに含まれていると思われがちですが、実は、ヒバにはヒノキのより多くも含まれています。特に青森ヒバにはヒノキの10倍ものヒノキチオールが含まれていることが知られています。

なお、ベイスギ(ウエスタンレッドシダー)にもヒノキチオールが含まれており、耐久性が高いことが知られています。

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青森のヒバ林は日本三大美林のひとつ

江戸時代、ヒバの山(林)純林に近い天然林が育成され、厳しく統治(大切に保存・利用)されてきました。木曽檜、秋田杉と並んで日本三大美林に数えられる青森ヒバの林は、当時のまま残っています。その面積は61,000ha、木材の蓄積量は木曽ヒノキの約3倍、秋田スギの約7倍もあるといわれています。ヒバ林のほとんどは青森県内にあり、下北半島と津軽半島で山間を行くと濃い緑色のヒバ林を随所に見ることができます。

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ヒバ材の生産

ヒバは、実生(種子から発芽させる)による造林は難しく、直挿し(枝を直接地面に指して育てる)や伏状更新(若枝を湾曲させるように、地面に着けて発芽させる)による苗木生産が行われてます。成長は遅く、降雪や漏死病(※)の影響などもあり、かつては、木材としての生産がなかなか増えない現状でした。

※幹の傷口等から樹脂が流出し、形成層(樹木が生長する部分)壊死する病気

しかし、木材の耐久性の高さから市場では需要が高く、近年では造林が積極的に進められています。

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ヒバ材の用途

ヒバ材は樹脂成分(ヒノキチオール)の働きで、極めて腐りにくく、水湿にも耐え、シロアリにも強いため、極めて耐久性が高い材として知られています。このため、古くから木造住宅の土台などの構造材に用いられています。ヒバ産地の周辺では、ヒバの柱を多く使っている住宅が見られます。仏閣などの建築の際、周辺にヒノキの良材がない場合には、ヒバがよく用いられてきました。

岩手県平泉の中尊寺金色堂や太宰治の生家など、東北地方の文化財はヒバで建てられているものが多く見られます。建築材の他、器具、風呂桶、漆器素地(能登地方の輪島塗の下地として有名)などにも用いられます。

現在は、ベイヒバ(イエローシーダー、ヒノキ科ヒノキ属)が輸入されるようになり、ヒバと用途が重なり、ヒバの代替材とされることもあるため、市場での競合が厳しくなっています。


〔参考文献・出典〕
日本文芸社「樹木図鑑」/学習研究社「日本の樹木」/日本木材総合情報センター「木net」


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