山元立木価格
山元立木価格の推移
山元立木価格(やまもとりゅうぼくかかく)とは、林地(森林)に立っている木の価格(立木のまま販売する際の価格)のことで、木から生産される丸太の材積(利用材積)1m3当たりの価格で示します。最寄の木材市場の売渡し価格(素材価格)から、伐採や運搬等にかかる経費(素材生産費等)を差し引くことにより算出します。これは、森林所有者の収入に相当します。
山元立木価格は、他の木材価格と同様に、昭和55(1980)年をピークに下落した後、近年はほぼ横ばいで推移しています。令5(2023)年3月末現在の山元立木価格は、スギが前年同月比で12.7%減の 4,361円/m3、ヒノキが18.2%減の 8,865円/m3、マツ(トドマツ、エゾマツ、カラマツ)が2.1%減の 2,672円/m3です。
年 | スギ | ヒノキ | マツ |
---|---|---|---|
昭30(1955) | 4,478 | 5,046 | 2,976 |
昭35(1960) | 7,148 | 7,996 | 4,600 |
昭40(1965) | 9,380 | 10,645 | 5,743 |
昭45(1970) | 13,168 | 21,352 | 7,677 |
昭50(1975) | 19,726 | 35,894 | 10,899 |
昭55(1980) | 22,707 | 42,947 | 11,162 |
昭60(1985) | 15,156 | 30,991 | 7,920 |
平2(1990) | 14,595 | 33,607 | 7,528 |
平7(1995) | 11,730 | 27,607 | 5,966 |
平12(2000) | 7,794 | 19,297 | 4,168 |
平17(2005) | 3,628 | 11,988 | 2,037 |
平22(2010) | 2,654 | 8,128 | 1,496 |
平27(2015) | 2,833 | 6,284 | 1,531 |
平30(2018) | 2,995 | 6,589 | 1,733 |
令1(2019) | 3,061 | 6,747 | 1,799 |
令2(2020) | 2,900 | 6,358 | 1,814 |
令3(2021) | 3,200 | 7,137 | 1,989 |
令4(2022) | 4,994 | 10,840 | 2,729 |
令5(2023) | 4,361 | 8,865 | 2,672 |
※利用材積1m3当たりの平均価格
丸太・製材価格と山元立木価格
スギの製材品、丸太、立木価格の推移をみると、製材品価格(正角)は、昭和55年に72,700円でしたが、平成7年には56,800円まで下落。その後令和元年には61,900円と平成初期と同水準まで回復しました。
また、スギの丸太価格は昭和55年に39,600円、平成7年が21,700円、令和元年が13,500円、山元立木価格は昭和55年に22,707円、平成7年が11,730円、令和元年が3,061円と低迷が続きました。
第三次ウッドショック(2021年3月頃~)の急激な木材価格の上昇時にも、令和4年のスギ製材品価格(正角・乾燥材)は、124,800円と2倍程度まで上昇したのに対し、丸太価格(スギ中丸太)は17,600円、山元立木価格は4,994円にとどまりました。山元(森林所有者)としては、ほとんどウッドショックの恩恵を受けないまま終焉に向かったようです。
※第三次ウッドショック…2021年3月頃から、コロナ禍で景気が低迷する中、アメリカの経済政策により、住宅需要が急増するとともに、世界中で木材需要が高まり、木材価格が高騰しました。
※第二次ウッドショック…2006年に、インドネシアで大統領令によって伐採規制が強化(違法伐採や違法輸出に対する取り締まりが強化)されたことにより木材価格が高騰。さらにロシアが、針葉樹丸太への輸出関税を引き上げたことにより、世界の需要が北米産へ集まったことで、世界的な丸太価格急騰をもたらしました。
※第一次ウッドショック…1990年代初頭、自然保護のため国有林の天然林伐採が規制され、アメリカ・オレゴン州とワシントン州の丸太輸出量が規制され、木材価格が世界中で高騰。さらにマレーシア・サバ州が丸太輸出禁止政策(1992年)をとり、さらなる価格高騰につながりました。
製材コストの上昇と山元立木価格
製材コストの上昇に伴い、製材品価格(スギ正角・未乾燥)に占める山元立木価格の割合は昭和55年31.2%であったものが、平成7年には20.7%、令和元年には4.9%(令和4年は7.7%)と大幅に低下してきました。同様に、丸太価格(スギ中丸太)に占める山元立木価格の割合も昭和55年には57.3%であったものの、平成7年は54.1%、令和元年には22.7%(令和4年は28.3%)と低下してきました。この状況をみると、製材コスト上昇は、山元立木価格に転嫁されているように見えます。
現在の丸太価格の低迷の中、再造林等を行うことは採算が合わない状況となっており、林業を産業として持続することが厳しくなっています。