赤鷽(アカウソ) スズメ目アトリ科ウソ属
アカウソ
冬の野辺の道端で「フィッ、ヒッ、フィッ」と優しい口笛のような小鳥の声が聞こえてきます。声の主は「ウソ(鷽)」とよばれる野鳥です。不名誉な名に聞こえますが、昔は「口笛」のことを「うそ(おそ)」と言っていたことがその名の由来です。日本で見られるウソの仲間は、ウソ、ベニバラウソ、アカウソの3種類で、スズメ目アトリ科のウソ属の亜種です。スズメよりも一回り大きくて、全長は16cmほどです。寿命は20年~25年ほどといわれています。
アカウソは、頭や翼、尾が黒色で、背中は灰色がかった青色、オスの喉や頬は淡い紅色で、うっすらとお腹まで紅色が広がっています。ウソよりもお腹が赤く見えるためアカウソとよばれています。メスの喉には紅色は無く、体色が全体的に茶色で、外側の尾羽に白い軸班があることがウソとの違いです。クチバシは短くて太く、ぽっちゃりとした風貌が特徴です。仕草はおっとりとして見え、柔和な印象を受けます。
アカウソは、夏期にシベリア(アムール・ウスリー・サハリンなど)の亜寒帯で繁殖します。枝や枯れ草などを使って皿上の巣を作り、一度に4個~6個産卵し、2週間ほどで孵化し、雛はさらに2週間ほどで巣立ちます。日本には冬にだけ飛来する冬鳥です。本州より南の山地や丘陵地の針葉樹の林を好んで生息します。
アカウソは桜や梅などの植物の芽や種子、ガの幼虫やクモなどを好んで食べます。また、何気ない道端の枯れ草の些細な種なども冬越しの食料となります。ウソの仲間は比較的警戒心が少ないので、声を気にかけていると間近に出会えることもあります。そんなときは、冬の枯野に咲いた一輪の花のような存在に見え、殺風景な冬景色が趣のある風景に変わったように感じるかも知れません。
福岡県の太宰府天満宮では、新年に「鷽替え」とよばれる神事があります。菅原道真公とゆかりの深い鷽にまつわる神事で、木彫りのウソを毎年取り替えることにより「嘘」を改める語呂合わせの意味があるようです。
林野弘済会「林野時報」/サントリーの愛鳥活動/wikipedia