植生の遷移と優占種交代のメカニズム
セイタカアワダチソウ
植生の遷移としくみ植生の遷移(植物群落の遷移)がどのようにして起こるのでしょうか。そのしくみを知るために「定置枠法」とよばれる手法があります。人為的に裸地をつくって、植生の変化を調べる実験です。
火山が噴火してできた熔岩上にはじまるような遷移は、植物が無から始まるので「一次遷移」とよんでいます。山火事が起こった土地や建設跡地のような場合には、すでに植物の生育する土壌や埋蔵種子も存在しているので、途中からの変化となるので「二次遷移」とよんでいます。
この二次遷移を定置枠法で調べてみると、東京付近では1年目にブタクサ、2年目にヒメジョオン、3、4年でセイタカアワダチソウに置き換わり、はじめの数年間はもっぱら外来の帰化植物で占められます。その後ようやくススキなど日本在来の草本やコナラ、アカマツ、ヌルデなどの木本に置き変わっていきます。ここまでは、概ね10年から20年程度ですが、それからが長く、極相の林(植生的に安定した森林)になるには300年から500年ほど要するといわれています。
遷移の各段階における優占種交代のメカニズムの解明は進んでいませんが、少しずつ明らかにされつつあります。
たとえば、裸地で1年目にブタクサが優占するのは、種子の重量が比軽的大きく、冬の低温による春化現象(バーナリゼイション)で、春先にいっせいに発芽し、しかも成長が早いためと考えられています。2年目のヒメジョオン、ヒメムカシヨモギなどは、小さな種子を多量につくって、春から秋にかけて時期的に幅広く発芽します。発芽後はロゼット型(地表に葉を平らに並べたような状態)でゆっくリ成長して冬を越し、2年目の春先に直立型に転じてすばやく成長し、優占種の座につくことがわかっています。
さらに植物体から分泌される物質の研究も進んできました。たとえば、ヒメジョオンやセイタカアワダチソウからは、ブタクサの生育を抑えるポリアセチレン化合物が、地下で分泌されていることがわかっています。このような物質が他の植物の生育に影響を与えること(植物の出す物質が、他の植物や微生物などの生育を促進または阻害すること)を、他感作用(アレロパシー)といいますが、このような植物間の作用も、植生の遷移や植物群落成立のメカニズムを解明する上で重要な要素といわれています。