ユキヤナギ バラ科/シモツケ属
ユキヤナギ(学名:Spiraea thunbergii、漢字表記:雪柳)は本州から九州にかけて自生し、世界中で栽培されています。庭や公園、市街地の生垣や街路樹にも利用されています。典型的な自生地は暖温帯の川岸の岩壁で、洪水時に水に浸かりながらも、岩の割れ目に根を下ろし、細い枝条を伸ばします。日本に元々自生していたのか、中国から渡来したものが野生化したのか、その由来には諸説あります。
ユキヤナギの和名は、葉がヤナギに似ていることと、白い花が雪をかぶったように見えることからつけられました。春になると枝垂れた長い穂にたくさんの花を咲かせ、花壇や公園を彩ります。その美しい姿は一際目を引きます。最近では、白一色だったユキヤナギに加えて、ピンクの品種も増え、色彩の幅が広がっています。特に「フジノ・ピンク」などが人気です。庭木としてだけでなく、切り花としても広く利用されています。強健な性質と生育力により、地際から刈り込んでも秋までに新梢が1m以上伸び、翌年もよく開花します。
ユキヤナギは養分や水分の少ない環境にも耐え、踏み固められたり乾燥した土地でも大きく成長します。その美しい花姿と強靭な性質で、多くの人々の心を魅了し続けています。
江戸時代の園芸書にみるユキヤナギ
雪柳、葉はヤナギのように小さい。花は小さく、白色で一重。1株よりたくさんの枝が生じる。枝の先に花が多く集まって咲く様子が雪のようである。高さは、二三尺(60~90cm)しかなく、愛らしい。実ができないので、春に根分けをする。また、うす紅色の花を着ける品種がある。
ユキヤナギの起源
ユキヤナギがもとは日本に自生していたのか、それとも中国から渡来したものなのか、その謎には諸説があります。江戸時代の本草学者、貝原益軒は『大和本草』の中で、「漢名未知」と述べました。もしもユキヤナギが中国から移入されたものであれば、その時点で漢名が与えられていたはずです。一方、ユキヤナギを世界に紹介したシーボルトは、「日本植物誌」で日本名を「Jukijanagi(ユキヤナギ)」とし、「雪のようなヤナギ」と解説しました。彼はさらに、別名として「Iwajanagi(イワヤナギ)」、すなわち「岩壁のヤナギ」とも呼ばれることを紹介しました。これらの和名が花の見た目や生育場所に由来していることから、ユキヤナギが日本に元々自生していた可能性が高いと考えられます。現代の中国の専門書では、「珍珠繍線菊」と呼ばれていますが、一般には「噴雪花」や「雪柳」として知られています。しかし、これらの名前も日本の漢字名に由来している可能性があります。このような観点から見ると、ユキヤナギはもともと日本に自生していた可能性が高いと言えるでしょう。
一般社団法人全国森林レクリエーション協会「子ども樹木博士ニュースNo.94」森林植物研究家 垰田宏 氏「樹木名の話」