オオイヌノフグリ(大犬の陰嚢) オオバコ科/クワガタソウ属

道ばたや野に咲き、瑠璃色にきらめくオオイヌノフグリの花。右下は実

道ばたや野に咲き、瑠璃色にきらめくオオイヌノフグリの花。右下は実

オオイヌノフグリ(学名:Veronica persica)は、オオバコ科クワガタソウ属に属する植物で、特に寒い季節に見られる美しい花を咲かせることで知られています。秋に芽を出し、冬の間には地面に沿って広がり、寒さから身を守るために葉や茎に短い毛を持っています。その高さは約10~20cmで、鮮やかな瑠璃色(コバルトブルー)の花が特徴です。

この花は直径5~8mmと小さめですが、2月から5月までの間、春の訪れと共に次々と咲き続けます。オオイヌノフグリの花は朝日と共に開き、夕方には閉じるものの、翌朝には再び開き、約3日間ほど楽しませてくれます。春の終わりには枯れてしまいますが、種を残して夏を越すことで再び秋に新たな芽を出します。最近、日本では在来種は減少しており、ヨーロッパ原産種が増えています。

オオイヌノフグリの名の由来と別名

オオイヌノフグリという名前は、花の実の形が犬の陰嚢(いんのう)に似ていることから付けられました。一見すると少し風変わりな名前に思えるかもしれませんが、別名には「瑠璃唐草」「天人唐草」「星の瞳」といった、より詩的で可愛らしい呼び名もあります。

興味深いことに、学名のVeronica(ヴェロニカ)は、聖女の名前から取られています。十字架を背負ってゴルゴダの丘に向かうキリストにその汗を拭うためのヴェールを捧げた優しい女性の名です。西洋では、オオイヌノフグリの花をよく見ると、キリストの顔が浮かび上がるとされることもあり、花には深い宗教的な意味合いも込められています。このように、オオイヌノフグリはただの花ではなく、文化や歴史と結びついた象徴的な存在でもあります。


〔出典・参考文献等〕
雷鳥社「草の辞典」/wikipedia(写真)

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