木の癒し効果
木材は、古くから住宅や家具等の材料として用いられ、木の香りや木の感触は、人に「癒やし(心地よさ)」をもたらすことが経験的に知られています。また、森林浴による癒やしの効果も同様に知られています。
木の香りによる癒やし効果(心拍と血圧)
木の香りによる癒やしの効果は、その成分であるいわゆる「フィトンチッド」によるものと考えられています。次のグラフは木の香り成分(フィトンチッド)が心身に及ぼす影響を調べた実験結果です。血圧が下がり、脈拍も落ち着き、身体的ストレスや精神的ストレスを感じた時に分泌されるコルチゾールの濃度も下がっています。
木の香りによる癒やし効果(脳の活動と副交換神経)
木の香りを嗅ぐと癒される(リラックスする)ことは、脳の活動にも現れています。被験者の女子大学生(20代・12名)が、ヒノキの葉から抽出した精油の香りを90秒間嗅ぐ実験をしたところ、脳の活動をあらわすヘモグロビン濃度が下がる(脳前頭前野活動を鎮静化させる)という結果が出ました。また、天然乾燥したヒノキのチップの香りも、被験者の女子大学生(20代・19名)について、実験したところ同様の結果が得られました。
※酸素化ヘモグロビンとは、血液中で酸素を運搬するヘモグロビンで、リラックス状態では、濃度が低下します。逆に脳が活動すると、濃度が上昇します。
※リラックス時には副交感神経活動が高まり、HF(High Frequency/高周波成分)を測定することにより知ることができます。
木に触れることによる癒やしの効果
木材を手で触ることによるリラックス効果も実験で確認されています。被験者(女子大学生・20代/18名)に目を閉じた状態で、木材や大理石など他の建築素材を90秒間触ってみると、木材は他の素材と比較して、触れると生理的にリラックスさせる実験結果が出ました。
なお、無塗装ヒノキ材を足の裏で触ったときのリラックス効果について大理石と比べてみた結果、リラックス効果(脳前頭前野活動の鎮静化、酸素化ヘモグロビン濃度の低下と副交感神経活動が高まる)が認められるとともに、ストレス時に高まる交感神経活動も抑制されることがわかりました。
〔参考文献・出典〕
財団法人 日本木材総合情報センター・全国木材協同組合連合会「人と環境にやさしい木のはなし」をもとに作成/実験データは森林総合研究所生物活性物質研究室 宮崎良文,1996より/Forestry & Forest Products Research Institute No.42 2018