育成林(人工林)の活用による炭素固定
二酸化炭素(CO2)は自然消滅しない
地球温暖化の大きな原因として、人間の経済活動(生産活動)に伴う化石燃料の消費による二酸化炭素(CO2)の排出が挙げらています。しかし、さまざまな分野で化石燃料に依存している現代社会では、今後も化石燃料の使用を避けられない状況です。
この化石燃料の使用により増えたCO2は、放っておいても消滅せず、宇宙空間へ逃げることもありません。つまり、人間が大気中に増やした化石燃料は、人間の力で減らさない限り、地球温暖化は止められないのです。
森林によるCO2吸収
二酸化炭素(CO2)の排出削減対策として、一般的には消費電力の削減(省エネ/節電)をはじめ、カーボンオフセット製品の製造・購入等があります。そしてもう一つ、森林によるCO2吸収が挙げられます。
京都議定書の第一約束期間(2008-2012年)では日本の温室効果ガスの排出削減目標6%のうち、6割以上に相当する3.8%をこの森林による吸収で達成する計画になっていました。この間、森林の持つCO2吸収能力を、最大限に発揮させるためのさまざまな取り組みが行われてきました。古今東西、森林は温暖化防止の重要な役割を担っています。
二酸化炭素吸収は若齢段階の針葉樹が旺盛
次のグラフは樹種別に林齢とともに二酸化炭素(CO2)の吸収量がどのように推移していくかを表したグラフ(=炭素固定量の試算)です。
育ち盛りの若い木がCO2をよく吸収する
CO2を吸収する能力は若齢段階(林齢が10~40年生程度)が最も活発で、広葉樹よりも針葉樹の方が大きいことがわかります。日本の育成林は主にスギ・ヒノキなどの針葉樹から構成されているため、育成林を上手に活用することが、CO2吸収(温暖化防止)につながるのです。
今の日本は成熟した木を活かす時代
日本の育成林(人工林)の林齢分布をまとめたのが次のグラフです。
戦後にあたる50~60年ほど前、先人たちは後世に資源を残すためにスギやヒノキなどの苗木を植えました。それが今、約1000万haの育成林(人工林)として広がっており、収穫期を迎えています。収穫期の森林は木材として使えるまでに成熟していますが、ほとんど成長しなくなるため、CO2をあまり吸収しなくなります。
しかし、現状は外国産材の輸入に押され、日本の木材があまり使われていません。日本には自国の森林で十分に賄えるだけの森林資源があるのですが、木材利用量の7割は外国から輸入しているのが現状(つまり木材の自給率は3割)です。豊富な森林資源が日本に取り残されているだけでなく、林業従事者も減り、森林の手入れが十分にできず、荒廃している森林も目立つようになりました。森林が荒廃すると、CO2の吸収機能が十分に発揮されなくなります。今、日本の木を伐って、使って、伐ったところに成長盛りの若い木を植えること(=「更新」)が、温暖化防止につながるのです。また森林資源を残すためにも森林を更新する必要があります。
収穫期を迎えた今の日本の森林資源を住宅や家具、内装、紙、玩具などの日用品などとして、積極的に活用する。そして、伐ったところには若い木を植えてCO2をたっぷりと吸収してもらう。このことが持続可能な森林の保護・育成であるとともに、地球温暖化防止につながるのです。
育ち盛りの若い木は高齢の木と比べてたくさんの二酸化炭素(CO2)を吸収して、ぐんぐん成長するんだ。育成林(人工林)で、40年~50年ほど育てて、収穫期になった高齢な木は、伐って、使って、伐ったところには、成長盛りの若い木を植えることが地球温暖化防止につながるんだね。
〔参考文献・出典〕
林野庁「森林・林業白書」/林野庁業務資料/森林総合研究所・温暖化対応推進拠点など