森林の発達段階
森林は長い年月をかけて、成長していきますが、その間に強風、火災、土砂崩壊、伐採などにより部分的または全体的に破壊されることがあります。これを「攪乱(かくらん)」といいます。次の図は全体的な攪乱が起こり、その後、攪乱を受けない状態が続いた場合に、森林の構造がどのように変化していくかを示したものです。
〔参考文献・出典〕 社団法人全国森林レクリエーション協会「森林インストラクター養成講習テキスト<森林編>」の林分の発達段階モデル(藤森,1997)より
幼齢段階
(人工林:攪乱後~10年程度/天然林:攪乱後~20年程度)
天然林では前世代の遺物である立ち枯れ木や倒木が多くみられ、その陰で生き延びた耐陰性のある樹種が部分的に生存し、新たに生育を始めた陽性の植物とともに生育していきます。
人工林では、地ごしらえを行い、前世代の幹は生態系の外に持ち出すため、植栽木以外は陽性の樹種が繁茂します。
若齢段階
(人工林:10年~40年程度/天然林:20年~50年程度)
高木性の樹種が優先するようになり、それらの林冠が形成されます。そのため林内は暗くなり、それまで生存を競い合っていた多様な植物種は淘汰されます。新たな植物の進入も困難で、林床植生は乏しくなります。
若齢段階の天然林では前世代の立ち枯れ木や倒木がしっかり残っています。 若齢段階の終盤には樹高が高くなるにつれて、風による樹冠同士の衝撃摩擦が強くなり、樹冠同士の間に隙間が生じてきます。
成熟段階
樹冠同士の間に帯状に隙間が生じてくると、林内はある程度明るくなり、林床植生が豊かになってきます。しかし、明るさにも限度があるので、低木層はある高さ以上に成長できず、二段林的な構造になります。
成熟段階の天然林では前世代の立ち枯れ木や倒木の腐朽が進んだものが残っています。
老齢段階
天然林では、成熟段階が長く続くと高木層の優勢木の中には衰退し、枯死するものが徐々に出現します。強風時には複数のものが同時に倒木することも起き、パッチ構造の発達した老齢林(極相林)へ移行します。老齢林では大径の衰退木、立ち枯れ木、倒木などが存在していて、さまざまな生物にハビタット・ニッチ(棲家、営巣の場、活動の場)を提供します。そこに老齢林の存在意義があります。 人工林では、木材生産が目的なので、老齢段階で大きく育てた木が衰退し、枯死させてしまうことは、生産目的から合理的ではありません。ゆえに、人工林では成熟段階までの段階で回転させていくのが合理的です。
※本文中の各発達段階の年数は目安で、地域や環境により異なります。
〔参考文献・出典〕 社団法人全国森林レクリエーション協会「森林インストラクター養成講習テキスト<森林編>」/素材辞典(樹木-豊かないのち編)