桐(キリ きり)
ゴマノハグサ科キリ属
北海道南部から南の各地に植栽。福島県(会津桐)、岩手県(南部桐)、新潟県、茨城県などが有名
キリ〔桐〕は切ってもすぐに芽を出し、どんどん成長するため「キル(切る、伐る)」が名前の由来となっています。また、木目が美しいので「木理(キリ)」が由来という説もあります。
桐は初夏に淡い紫色の花を
枝先に多数集めて咲かせる
花は径5~6cmほどの細長い鐘形。花冠は5つにわかれる
葉はふつう15cm~30cmの幅広い卵形。1m近くになることも
樹皮は灰色、縦に裂けて、さざ波のような模様になる
桐(キリ)はゴマノハグサ科キリ属の広葉樹です。成長が早く、短期間で木材が得られる樹種です。早生で花も美しいので海外でも園芸樹として植栽されています。 桐(キリ)は日本では最も軽い(密度が低い)木で、断熱性及び調湿性(防湿効果)に優れ、同時に収縮・膨潤率が低く木材としての狂いが小さいことも特徴です。日本の木製家具の中でも、特に桐(キリ)の箪笥は優れた家具といえます。
桐と人間社会との歴史は非常に古い
桐の紋章。花の数が5、7、5となっていることから「五七桐(ごごしちぎり)といわれます
日本では、弥生時代から桐を材として利用しており、登呂遺跡から「小琴」が発掘されています。
現在も桐材は、神社、寺院、宮廷の儀式で歌や舞に用いられる琴や箏として使われ続けています。
また、桐は紋章として、皇室や日本国、貨幣の装飾などに使われています。
娘が生まれたら桐を植える
かつて日本では女の子が生まれたら、キリの木を植える習慣がありました。将来、娘が嫁ぐとき、娘とともに大きく育ったキリの木でタンスにして持たせてあげるためです。キリの成長のサイクルと人間の成長のサイクルが適合することを先人は知っていたのでしょう。将来を見通して、育てて、使うという日本人の美しい習慣です。
キリ〔桐〕は家具に適した樹種
キリ材は国産材の中で、最も軽くて淡褐色。防湿効果・防虫効果・耐火性もある
桐は成長が早く、短期間で木材が得られる樹種であることが特徴の一つです。植栽後10年ほどで樹高は10m、胸高直径は50cm近くになります。また、材としては空洞が大きいことによる防湿効果(調湿効果)、虫が嫌うタンニンを多く含むことによる防虫効果があります。
多湿な気候風土をもつ日本では、この性質を利用して箪笥をつくります。日本の木製家具の中でも、特に桐箪笥は優れた家具といわれています。桐の箪笥には、上記のように衣類を守る効果があり、さらに、桐材は狂いにくく、湿気を通さず長持ちするからです。
さらに、古くなるほど耐火性が強くなり、火災にあっても着物が守られます。ちなみに、金庫の中には耐火性をあげるため、桐板を張っているものもあります。
キリ〔桐〕材の琴
桐材は密度(比重)は0.2~0.35g/cm3ほどで日本では最も軽い木です。優美である上に、防湿性があり、腐りにくく、音響効果を高めるなどの理由から、琴や琵琶の材料として昔から重宝されてきました。
名器には樹齢200年に達した木目の美しい無傷の桐材が使用されているとのことです。特に北海道や東北地方の寒い地方で成長する桐は、木目が密で道管が大きく、密度が小さい材となり、良材になると言われています。岩手の南部ギリや福島の会津ギリが良材として有名です。
中でも、岩石地や砂礫地などでゆっくり成長したものが最もよく、畑や庭地で育ったものは楽器として用に耐えないとのことです。
清流沿いの砂地で、朝夕のお寺の鐘の音を聞きながら育つキリ材が最適なのかも知れませんね。
〔参考文献・出典〕
小学館「葉で見分ける樹木」(林将之著)/日本文芸社「樹木図鑑」(鈴木庸夫著)/講談社「木と日本人のくらし/」一般財団法人 日本木材総合情報センター「木net」