攪乱 かくらん

森が壊れ、命が芽吹く

森林における「攪乱(かくらん)」とは、森林の構造や生態系の状態が、一時的または長期的に変化させられる出来事や要因のことを指します。具体的には、強風・火災・土砂崩壊・伐採などによって森林が部分的あるいは全体的に破壊される現象が攪乱の原因となります。

攪乱はしばしば破壊的な側面を持ちますが、同時に森林のダイナミクス(時間的変化)において重要な役割を果たし、新たな森林の更新や生物多様性の形成・維持を促す自然のメカニズムでもあります。

攪乱の分類

1. 自然的攪乱

自然の力によって引き起こされる攪乱には、以下のようなものがあります。

攪乱の種類説明
風倒(風害)台風や強風により木が倒れる現象。風倒木の隙間から光が入り、更新が進むことも。
火災(山火事)落雷や乾燥気候などで発生。森林の構成種が大きく変わることがある。
雪害・氷害豪雪や着氷によって樹木が折れる・倒れる。
虫害・病害マツノマダラカミキリなどの害虫や菌類による大規模な枯死。
土砂災害・洪水地滑りや河川の氾濫によって森林が流出・破壊される。

2. 人為的攪乱

人間の活動によって引き起こされる攪乱には、次のようなものがあります。

攪乱の種類説明
皆伐一斉に樹木を伐採する方法。大きな攪乱となるが再造林による回復が前提。
農地転用・宅地造成森林が完全に他の土地利用に変わり、生態系の回復が困難になる場合も。
林道建設・重機作業局所的な土壌攪乱や生態系の分断を引き起こす。

攪乱の意義と影響

攪乱は一見「破壊的」に見えますが、実は森林の更新生物多様性の維持にとって重要な役割を果たします。

  • ギャップ形成:風倒や倒木などで生じた林床の空間(ギャップ)は、光を必要とする樹種の更新を促す。
  • 多様な生息環境の創出:倒木や枯死木が生物の住処や餌となる。
  • 遷移の促進:草本 → 低木 → 高木のような遷移が起き、植生の多様化が進む。

ただし、人為的攪乱が過剰だったり、再生が行われなかったりすると、以下のような生態系の機能低下を招くこともあります。

  • 土壌流出や植生の劣化
  • 外来種の侵入
  • 炭素吸収能力の低下

「攪乱」とは、森林に変化をもたらす出来事。それは破壊だけでなく、新たな命の始まりでもあります。 攪乱と回復のバランスを知り、私たちも森林とどう向き合うかを考えることが求められています。


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