薪炭 しんたん

かつての暮らしを支えた木質燃料

薪炭(しんたん)とは、その名のとおり「薪(たきぎ/まき)」と「炭(すみ)」を総称した言葉です。かつての日本では、調理や暖房など、日常生活に欠かせない主要な燃料として広く使われてきました。

しかし、戦後の燃料革命を経て、生活の燃料は石油やガス、電気へと大きく転換し、薪炭の役割は次第に縮小していきました。

薪炭 かつての暮らしを支えた木質燃料の写真

暮らしを支えてきた木の燃料・薪

薪炭の歴史

日本における薪炭の使用は、古代から現代に至るまで長い歴史があります。縄文時代の遺跡からも、燃焼した木材の痕跡が発見されており、すでに調理や暖房に使われていたと考えられています。

中世以降、都市部では炭の需要が急増し、特に近世(江戸時代)には「炭焼き」が重要な林業の一つとして定着しました。農村では、農閑期に薪や炭を生産し、都市へ供給することで副収入を得ていました。

しかし、昭和30年代に始まった「燃料革命」によって、エネルギー源は木質燃料から化石燃料へと急激にシフト。これにより、薪炭の生産は急速に衰退し、山村の暮らしにも大きな変化をもたらしました。

薪炭の用途

かつての薪炭は、次のような用途で使われていました:

用途
調理 かまど、囲炉裏など 火鉢、炭火焼、茶道の火種など
暖房 薪ストーブ、囲炉裏 火鉢、こたつなど
産業 乾燥・加熱処理 鍛冶、製鉄、陶芸など

特に炭は煙が少なく火持ちがよいことから、都市部や室内用途に重宝されました。一方、薪は入手しやすく火力も強いため、山村や農村で広く用いられました。

現代での見直し

近年、薪や炭が再び注目されています。背景には以下のような理由があります:

  • キャンプやアウトドアの人気:焚き火や炭火料理への関心が高まり、薪や炭の需要が増加。
  • 持続可能なエネルギー源としての価値:再生可能資源として、化石燃料に代わる「カーボンニュートラル燃料」としての可能性。
  • 伝統文化の継承:茶道、備長炭づくり、炭焼き体験などを通じて、地域資源と技術の再評価が進む。

特に、国産の炭や薪を選ぶ消費者も増えており、林業との連携が再び模索されています。

森林との関係

薪炭の利用は、森林と深い関わりを持っています。かつての里山では、定期的な伐採と萌芽更新(ほうがこうしん)により、薪や炭の材料となる雑木林が循環的に管理されていました。

このような「薪炭林」の維持は、以下のような効果をもたらします。

  • 生物多様性の保全:適度な間伐により光が差し込み、多様な植物や昆虫が生育。
  • 山林の健全化:放置林の荒廃を防ぎ、土壌流出や獣害のリスクを軽減。
  • 地域経済の支援:炭焼きや薪づくりが地元の産業として再生する可能性。

現在では、薪炭材の活用を通じて、放置林の整備や里山の再生を進める動きが各地で見られるようになっています。


かつての生活に欠かせなかった薪炭は、化石燃料に置き換えられて一時は忘れられた存在となりました。しかし、今また、持続可能な社会や地域資源の活用という視点から、その価値が見直されつつあります。薪や炭を通じて、森林と人との新たな関係が築かれようとしています。

🌲 むかしのエネルギー
まきとすみのおはなし

みんなは「まき」や「すみ」を知ってるかな?

まきは、木のえだや木を切ったもの。すみは、木をもやしてつくった黒いかたまりです。

むかしの人たちは、ガスや電気がなかったころ、おふろをわかすのも、ごはんをつくるのも、ぜんぶまきやすみをつかっていたんだよ!🔥
まきはパチパチとよくもえて、すみはゆっくりなが〜くもえるのがとくちょうなんだ✨

でも、せきゆやガスがつかわれるようになってからは、まきやすみはすくなくなってしまいました。

ところがいま、キャンプやバーベキューでまきやすみが大人気!
もりのかんきょうを守るためにも、まきをつかうのはとってもいいことなんだ🌳

みんなも、キャンプのときに「これはもりのエネルギーなんだなぁ」って思いながら火をつかってみてね!
まきやすみをつかうことは、もりや自然を大切にすることにもつながっているんだよ🍀

森林・林業学習館 for きっず

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