護岸工 ごがんこう

護岸工とは、川や湖、海岸などの水辺で、波や流水、高潮などによる浸食から岸を守るために設けられる土木構造物のことをいいます。
堤防や河川敷を安定させ、洪水や津波などによる被害を軽減する重要な役割を持っています。また、近年は治水機能だけでなく、景観や生態系との調和も重視されるようになっています。

護岸工の主な役割

役割名 内容
侵食防止 流水や波による浸食を防ぎ、岸を保護する。
堤防の保護 堤防や基盤の安定を守り、洪水や高潮からの被害を軽減する。
土地利用の確保 河川敷や港湾沿岸の土地利用を安全に確保する。
環境・景観の保全 景観や生態系に配慮し、水辺環境を保全する。

護岸工の主な種類

種類名 特徴
コンクリート護岸 耐久性に優れ、都市部の河川や港湾で多用される。
ブロック護岸 コンクリートブロックを組み合わせ、施工・補修が容易。
石積み護岸 自然石を用い、景観に優れ、伝統的に用いられてきた。
植生護岸 芝や樹木の根を利用し、環境にやさしいが耐久性に課題がある。
多自然型護岸 治水と生態系保全を両立し、水辺空間や魚道を確保する。

日本での位置づけ

日本は山がちで川の流れが急であり、台風や豪雨も多いため、古くから護岸工が発達してきました。明治以降は近代土木技術を取り入れたコンクリート護岸が増えましたが、近年は生態系や水辺環境への配慮から「自然と共生する護岸づくり」が重視されています。

護岸工と河川工学・森林・林業の関連

護岸工は河川や海岸の防災だけでなく、河川工学森林・林業とも深く関わっています。

河川工学との関連

・治水の基本施設

護岸工は、河川工学において堤防やダムと並ぶ重要な治水施設の一つです。洪水時の水流や波浪によって川岸が削られるのを防ぎ、河川断面を安定させます。

・流路の安定化

山地や中流域では流れが急で土砂輸送量も多く、護岸工が流路を安定させる役割を果たします。これにより、橋梁や道路、住宅地などの社会基盤を守ります。

・水辺環境との調和

近年は河川工学の分野でも「多自然型川づくり」が重視され、護岸工にも魚が遡上できる空間や植生に配慮した工法が導入されています。

森林・林業との関連

・山地河川と土砂流出

日本の山地河川は勾配が急で、豪雨時には土砂崩れや流木が発生しやすいです。森林は根系で斜面を安定させ、落葉層が雨を吸収することで土砂流出を抑える役割を持っていますが、伐採や荒廃によって保水力が低下すると土砂災害が増えます。このとき護岸工が下流域での被害を防ぎます。

・林業との接点

昔の護岸には自然石や木材が多く使われました。特に蛇籠(じゃかご)護岸木工沈床など、森林資源を活かした護岸工法がありました。今日でも間伐材や竹を組み合わせ、環境にやさしい護岸資材として使われる事例があります。

・森林整備との一体的管理

護岸工だけでは流域の治水は不十分で、上流の森林整備(間伐・植林・治山工事)と合わせて行うことで効果が高まります。いわば「森林=上流のダム、護岸=下流の守り」という役割分担です。

護岸工のまとめ

護岸工は単なる「川の壁」ではなく、

  • 河川工学における治水・流路安定の要
  • 森林の保全や林業活動と組み合わせた土砂災害対策
  • 自然環境と調和した多自然型の水辺づくり

という複合的な位置づけを持っています。


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