針広混交林 しんこうこんこうりん

針葉樹と広葉樹が共に生きる森林

針広混交林とは、針葉樹と広葉樹が同じ森林内に混じり合って生育している森林のことです。たとえば、スギやアカマツなどの針葉樹と、コナラやブナ、カエデなどの広葉樹が混在することで、構造が複雑で多層的な森林が形成されます。

このような森林は、樹種の多様性によって病虫害や風倒などのリスクが分散され、森林全体の健全性や安定性が高まるとされています。また、生物多様性の保全や景観の向上、水源涵養機能の強化など、多くの公益的機能を発揮しやすいのも特徴です。

人の手による混交化の取り組み

近年、戦後に造成されたスギやヒノキなどの単一樹種の人工林(単純林)を見直し、混交林へと転換する動きが広がっています。
具体的な取り組みには以下のようなものがあります。

施策内容
間伐後の広葉樹の植栽人工林の間伐を行った後に、広葉樹の苗木を植えることで針広混交林化を促進。
天然更新の活用広葉樹の種子が自然に入り込むように林床環境を整え、自発的な混交化を目指す。
広葉樹の残存・育成林内に元々ある広葉樹を伐採せずに残し、将来的に混交林を形成する。
多様な樹種による植林計画更新時に複数樹種を選定して植林する「複層林施業」などの導入。

これらの施業は、生態系の多様性と森林の持続可能性を高めることを目的とし、全国の森林管理で実践されつつあります。

代表的な針広混交林の地域・スポット

日本国内では以下のような地域で針広混交林が見られます。

白神山地(青森県・秋田県)

概要世界自然遺産のブナ天然林を主体とする広大な山地。谷筋や標高帯により樹種構成が変化する。
特徴ブナ優占の広葉樹林に、トドマツ・アスナロなど針葉樹が混在する自然混交林。
備考人為影響の少ない混交林の典型で、保全・研究・自然観察の重要拠点。

函館市南茅部のスギ人工林地帯(北海道・道南)

概要渡島・檜山地方に点在する道南スギの人工林群。沿岸丘陵~低山帯に分布。
特徴スギ人工林にミズナラ・イタヤカエデ・ハルニレ等の広葉樹が自然侵入し、針広混交化が進行。
備考北海道では希少なスギ×広葉樹の混交林として資源活用・景観面で注目。

乗鞍高原(長野県松本市)

概要標高1,500~2,000m級の山岳高原。冷温帯~亜高山帯の移行域。
特徴シラビソ・トウヒなど針葉樹と、ミズナラ・カエデ類等の広葉樹が混生する高冷地の混交林。
備考エコツーリズム・自然教育の対象地として整備が進む。

石徹白(いとしろ)地域(岐阜県郡上市)

概要奥美濃の山間部。旧石徹白村を中心とする水源域の森林圏。
特徴トドマツ・ウラジロモミなど針葉樹と、ブナ・ミズナラの広葉樹が混じる原生的な混交林。
備考水源涵養機能が高く、保全・持続的利用の両面で注目。

備中高梁地域(岡山県高梁市周辺)

概要中国山地の中間地帯。人工林と二次林がモザイク状に分布。
特徴スギ・ヒノキ人工林にアベマキ・クヌギ・ヤマザクラ等が侵入し、施業により混交化を促進。
備考混交林化のモデル施業地として再造林・複層林施業の試行が進む。

吉和地域(広島県廿日市市)

概要標高600~1,000mの中国山地南部。冷涼な内陸気候。
特徴スギ・ヒノキにミズナラ・コナラが混じる混交林。野生動物(ツキノワグマ等)の生息地。
備考森林セラピーや林道網整備が進み、保健休養・防災両面の機能発揮。

こども自然公園(神奈川県横浜市・大池公園)

概要都市部に残る大規模な里山公園。池・谷戸・尾根が連続。
特徴スギ・ヒノキにクヌギ・コナラ・アカメガシワ等が混交。市民参加の間伐・植樹で混交化。
備考環境学習・ボランティア活動の拠点で、都市近郊の混交林再生事例。

狭山丘陵(埼玉県所沢市~東京都東村山市)

概要多摩湖・狭山湖周辺の丘陵地。雑木林と人工林がモザイク状に分布。
特徴スギ・ヒノキ林にクヌギ・コナラ等の雑木が混在する典型的な針広混交林。
備考「トトロの森」のモデルとして知られ、自然保全と市民利用の両立が進む。

🌳 いろんな木がなかよく育つ森
「針広混交林(しんこうこんこうりん)」って
なあに?

みんなは森に行ったことがあるかな?
森には、とがった葉っぱの木(針葉樹)と、広い葉っぱの木(広葉樹)があるんだよ。

🌲 たとえば「スギ」や「マツ」は、冬でも葉っぱが落ちない針葉樹。
🍂「コナラ」や「カエデ」は、秋になると葉っぱが赤や黄色になって落ちる広葉樹だよ。

そんなちがう種類の木が、いっしょに育っている森を「針広混交林(しんこうこんこうりん)」っていうんだ!

🐿️ いろんな木があると、なにがいいの?

いろんな木があると、いろんな動物や虫たちがすめるようになるよ。

  • 🌰 コナラのドングリを食べるリスやイノシシ
  • 🌲 スギの木のすきまにすむ鳥や虫
  • 🌳 カエデの葉っぱにとまるチョウチョ

こんなふうに、木がバラバラにあるより、まざっていたほうが、森がにぎやかで元気になるんだ!

👷‍♂️ 人が手伝ってつくる「まざった森」

むかし、日本ではスギやヒノキだけをいっぱい植えた森(人工林)がたくさんつくられたんだ。でも、同じ木ばかりだと、病気や風でたおれやすいこともあるんだって。

そこで今は、

  • ドングリの木を新しく植えたり、
  • 自然に広葉樹がはえてくるように森の中を明るくしたり、

いろんな工夫をして針葉樹と広葉樹をまぜた「まざった森」をつくろうとしているんだよ。

🏞️ どんなところにあるの?

「針広混交林」は、日本のいろんなところにあるよ。たとえば…

  • 白神山地(しらかみさんち・青森県と秋田県)
  • 乗鞍高原(のりくらこうげん・長野県)
  • 狭山丘陵(さやまきゅうりょう・埼玉県と東京都)

森の中を歩いてみると、とがった葉と広い葉っぱがまじっている木々に気づくかもしれないね!

🌱 まとめ

「針広混交林」は、いろんな木がなかよく育つ森
そういう森には、いろんな生きものがくらしていて、森全体が健康になるんだ!

みんなも、森を歩くときは「この森にはどんな木があるかな?」って、ぜひ見てみてね👀🌳✨

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