集成材とは? 特徴・種類・用途をわかりやすく解説

木を重ねて強くする─現代建築を支える「集成材」

集成材(しゅうせいざい)とは、小さな木の板(ラミナ)を接着剤で張り合わせて作られた木材のことです。英語では「glued laminated timber(グルーラム)」とも呼ばれます。

集成材 木を重ねて強くする─現代建築を支える「集成材」の写真

大阪関西万博の大屋根リングには、構造用集成材が使用された

集成材とは

集成材(しゅうせいざい)とは、厚さ2.5~4cm程度の「ラミナ」と呼ばれる板材を数枚重ね、強力な合成樹脂で接着して作られる木材製品です。板を重ねることで高い強度が得られ、天然の無垢材に比べて反りや割れが少なく、寸法の安定性にも優れています。ラミナには小径の間伐材なども利用できるため、森林資源の有効活用にもつながり、環境にも配慮された「エコロジーな木材」として注目されています。

集成材は、「エンジニアウッド(工業的に設計された木材)」とも呼ばれ、強度性能が明確に保証されています。その強さは、大型木造建築物である秋田県の大館樹海ドームにも活用されており、現代の木造建築を支える重要な素材となっています。

集成材の主な種類と用途

集成材は、用途や構造によっていくつかの種類に分かれます。以下では代表的な集成材とその特徴、利用例を紹介します。

構造用集成材(こうぞうようしゅうせいざい)

建物の梁や柱など、力を支える構造部分に使われる集成材です。強度等級(E・T・Lなど)によって分類され、建築基準法に基づいた設計が可能です。木造住宅から大規模建築物まで幅広く用いられます。

造作用集成材(ぞうさくようしゅうせいざい)

階段や家具、内装などに用いられる集成材です。見た目の美しさや加工のしやすさが重視され、節の少ない仕上がりが特徴です。インテリアや建具などにも多く使われています。

化粧ばり集成材(けしょうばりしゅうせいざい)

表面に高級感のある天然木の単板(スライスされた薄板)を貼った集成材です。中身は安定した構造の集成材ですが、見た目はまるで無垢材のような仕上がりになります。

CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)

板材を繊維方向を直交させて交互に貼り合わせたパネル型の構造用集成材です。面で支える構造のため、壁や床、屋根として使われ、住宅から中高層ビルまで対応可能です。

防腐・防蟻処理集成材

防腐剤や防蟻剤によって耐久性を高めた集成材で、屋外や湿気の多い環境での使用に適しています。公園のデッキや橋梁などに利用されます。

最新の活用事例:大阪・関西万博の大屋根リング

大阪・関西万博(2025年開催)では、会場の中心に「大屋根リング」と呼ばれる直径約615メートルの巨大なリング状構造物が設置されました。この大屋根リングには、国産のスギ材を中心とした構造用集成材が使用されており、日本の木材技術と環境意識の高さを象徴するものとなっています。

大屋根リングは、鉄骨と木材のハイブリッド構造であり、特に木材部分には工場で乾燥・加工された高精度の集成材が用いられています。このような大規模建築に集成材が採用される背景には、強度の確保、形状の自由度、寸法安定性といった技術的利点に加え、国産木材の活用やカーボンニュートラルの推進といった環境面での配慮もあります。

集成材の使用によって、伝統と最先端技術が融合した建築物が実現され、木材の可能性が世界に発信される機会にもなっています。

集成材と無垢材の違い

集成材は、工業的に品質が管理されており、寸法や強度にばらつきが少ないというメリットがあります。以下に、無垢材との比較を表で示します。

項目集成材無垢材
形状の自由度サイズや形状の調整がしやすい自然の形状に制限される
寸法安定性反り・割れが起きにくい乾燥や環境変化で変形しやすい
強度性能設計通りの強度を確保できる木材の個体差に依存する
見た目均一な仕上がり自然な木目が魅力

集成材とLVLの違い

木材の工業製品には集成材のほかに「LVL(Laminated Veneer Lumber)」があります。どちらも接着によって性能(強度や寸法安定性)を高めた「エンジニアードウッド(工業製材)」ですが、構造や特性、用途に違いがあります。

集成材(Glulam)の特徴

項目内容
名称Glued Laminated Timber(グルーラム)
構造厚さ2.5~4cm程度の「ラミナ(板材)」を繊維方向にそろえて積層し、接着した木材
外観木目が見える厚板が重なった構造
特徴曲げやすく、大断面や曲線構造も可能。美観にも優れる
主な用途建築の梁・柱、家具、階段、体育館やドームの大スパン構造

LVL(Laminated Veneer Lumber)の特徴

項目内容
名称Laminated Veneer Lumber(ラミネーテッド・ベニヤ・ランバー)
構造薄い単板(ベニヤ)を繊維方向をそろえて何層にも接着し、圧縮したもの
外観合板のように見えるが、全層が同一方向に揃っている
特徴高い強度と寸法安定性。構造計算しやすい。均質
主な用途梁、柱、まぐさ、家具部材、下地材、輸送用パレットなど(集成材より量産性が高い)

構造と特徴の比較

比較項目集成材(Glulam)LVL(Laminated Veneer Lumber)
構造厚板(ラミナ)を積層薄い単板(ベニヤ)を積層
繊維方向主に同一方向(または交差も可能)すべて同一方向
見た目木目が美しい。無垢材に近い合板に似た層構造。表面は加工前提
曲線加工可能(曲げ集成材あり)基本的に直材のみ
強度高強度。梁・柱などに使用均質な強度。特に横方向の曲げに強い
用途構造材、家具、内装、曲面梁など梁、まぐさ、下地材、パレットなど
コストやや高価比較的安価で大量生産向き

一般的には、美観や自由な形状、デザイン性を重視するなら集成材が適しており、機械的均質性やコスト効率を求める現場ではLVLが効果的です。目的に応じた選択が求められます。


集成材は、構造材としての強さと安定性を持ち、同時に見た目の美しさや加工のしやすさも備えた優れた木材製品です。エコロジーな素材としても注目され、小径木や間伐材の有効利用が可能で、持続可能な森林資源の活用にも貢献しています。現代の建築やインテリアにおいて、無垢材と並ぶ重要な素材として、今後ますます活用の幅が広がっていくことでしょう。


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